The previous night of the world revolution6~T.D.~

さて、食事をして、その後ベッドで『食事』もして。

満足そうな笑みを浮かべて、すやすやと眠るセカイさんの、

「むにゃむにゃ…。も〜ルーチェス君たらぁ…うふふ、か〜わいいんだから〜」

などという、何の夢を見ているのか、大層気になる寝言を聞きながら。

いざ、論文開始。

まずは、本棚から本を取り出す。

世界の名だたる共産主義者が書いた、共産主義論を記す名著である。

スパイの仕事を引き受けたときから、こんなこともあろうかと、こういう類の本を集めて、読んでおいた。

元々、王宮にいた頃にも、共産主義の勉強をさせられたことはあるので。

彼らの語る理論がどんなものなのかは、大体分かっている。

が、やっぱり論文を書くには、色々な本から引用も必要だしな。

論文の構想は、帰り道で既に考えてきた。

あとは、どの本のどの部分を引用するか、だ。

一口にコミュニズムと言っても、派閥は色々ある。

杓子定規の、原理主義的コミュニズムしか認めない!一切の寛容論は聞き入れない!っていう、頭の堅い原理主義者から。

資本主義を取り入れつつ共産主義を展開しよう、時代や状況に合わせて中和策を取ろうという、自由主義者もいたり。

コミュニズムと言っても、程度によって色々だ。

そして、あの『赤き星』はどの立場に立っているコミュニストなのか。

あの部室に入ったとき、本棚に並んでいた大量の本を思い出す。

国内外から、ルティス語訳されたコミュニズムについての本があったが。

その中の何冊かは、僕の手元にある本と同じものだ。

そしていずれの本も、かなり過剰な…コミュニズム原理主義者の著書だ。

つまり、あの『赤き星』というサークル。

相当原理主義の考えを持った、根っからのコミュニストであるらしい。

まぁ、僕を簡単に受け入れてくれなかった時点で、何となく察してはいたけど。

『赤き星』の党員達は、頭の中コミュニズムでいっぱいの連中なのだ。

だからここで、僕が日和見主義の論文を書いたら。

きっと彼らは、こんな生温い覚悟の奴は要らない、と僕をはね退けるだろう。

折角開きかけていた、『赤き星』への門が、閉ざされてしまうことになる。

それは困る。

ので。

そういう、原理主義的な本だけを選んで、ここから引用するとしよう。

大まかな構想は考えてあるから、そこから、より原理的コミュニズム思想を、論文にしたためる。

本のページを捲るとき以外、僕が手を止めることはなかった。

すらすらと書き進めていく。

書くことに困ったりはしない。

実は僕もコミュニストで、彼らの考えに賛同しているから?

冗談じゃない。そんなつもりは全く無い。

僕はただ、「演技」をしているだけだ。

生まれが生まれだったもので、本心を隠して、上辺だけ取り繕うのは得意でね。

僕は今、「『赤き星』に認めてもらう為、自分がいかに熱心なコミュニストであるかを証明しようとしている学生」の役割を演じている。

それだけのことだ。

役になり切ってしまえば、書くことに困りはしない。

そういえば、字数制限については何も言われていないな。

恐らく、それもテストなのだろう。

たかが1000字くらいじゃあ、笑い者。

5000字は最低、30000字は…書こうと思えば書けるが、さすがにやり過ぎか。

三日間という期限を考えれば、10000字に行かないくらい…精々7000字が、無難なラインだろう。

あまりに優秀過ぎても、逆に怪しまれかねないからな。

あくまで、熱心な一年生だと思われるくらいで良い。