【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


それに市ヶ谷さんに肩代わりしてもらっている母の借金だって少しずつ返していくつもりだ。

そういう事を説明するのに適切な言葉が思い浮かばない。 一気に嫌な雰囲気になった車内に携帯の着信音が響く。

一瞬桃菜かと思い自分の携帯を見て見たけれど、どうやら着信は伊織さんの携帯からのようだった。

「はい…。碧人何だよ、俺は今忙しいんだ。 今日は一日休むと言っていただろうが…。
頼んでおいた資料は家に届けて行くように言ってただろう。
ん?何うちに不審者? 真凛の知り合い?」

着信相手はどうやら小早川さんだったようだ。 伊織さんの困惑している様子と’真凛の知り合い’という言葉に嫌な胸騒ぎがした。

信用関係があるからか、仕事の関係で小早川さんはうちに自由に出入りをしていた。

慌てたように車を走らせたかと思えば、伊織さんは私に「どうやら真凛の友達と名乗っている人物がマンション前をうろついていたらしい」と言った。

その人物が桃菜であるという事は既に分かり切っていた。