【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


「何を碧人の話をしている時そんなに嬉しそうにする?!
あいつは優しそうに見えるが、結構な腹黒男だ…!それに別に性格が良いってわけじゃない!」

「そんな…友達の事をそんな風に言わなくても…!」

「お前は俺の妻だ…!よそ見ばっかりしていないで俺だけ見つめていればいいだろう!」

余りの気迫に、一瞬驚いてしまう。  実は感情表現が豊か…?
というか、それってまるでヤキモチみたいに見える。

伊織さんはブスっとした顔のまま「ごちそうさま」と言ってテーブルから立ち上がった。
キッチンへ食器を運ぶ伊織さんを慌てて追いかける。

「伊織さんっ」

「何だよ」

「もしかして、ヤキモチですか?
私が小早川さんばかり褒めちゃったから」

背中越しにそう話を掛けると、一瞬彼の肩がびくりと反応した。

振り返るとバツの悪そうな顔をしており、唇を尖らせている。 その顔を見て、フッと笑みがこみ上げてしまう。

「伊織さんもかっこいいです。」

「そんなの知ってる。学生時代から碧人より俺の方がモテた」