【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


「あのー…伊織さん、小早川さんに私の料理が美味しいって言っていたと聞いたのですが」

「ごふッ。 ゴホッゴホッ」

「だ、大丈夫ですか?!」

「またあいつは余計な事を……!」

また伊織さんは真っ赤になってしまう。  …こんなに表情が変わるのか。
あんまり喜怒哀楽がない人かと思っていたのに。

「ゴホンッ! 勿論、真凛の作る料理は何を食べても美味しい。 むしろ美味しくなかったら全部食べない。
俺は元々食には興味がなかったから、栄養があれば何でも良いと思っていた人間だからな」

「じゃあ…美味しいって直接言ってくれればいいのに…
伊織さんが全然美味しいとか感想も言ってくれないから心配してたんですよ?!
それに食事中もずーっと無言で無表情でご飯を食べているし…」

「それはッ……食事中は喋らないようにと昔から言われていたんだ…。
それに真凛からも何も言ってこなかったから黙っていた方が良いのかと…」