【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


確かに昨日小早川さんがボヤージュの新作のケーキを持ってきた。 その現場を伊織さんは見ていた。

まさかと思うけど……

まさか、まさか、伊織さん昨日の会話を聞いて、私が甘い物好きだからってこんなに大量のお菓子を…?!

明らかに戸惑っている伊織さんを前にして、こっちの方がパニックになりそうだ。

それはつまり、私の為…とか?

「いえ、大丈夫です! 今日の分も…そうそう食べきれる量でもないですし。
けれどまさか…伊織さん私の為にお菓子を贈って下さったんですか?」

そう言うと、伊織さんは目を大きく見開いて
すぐに顔が真っ赤になってしまった。

「だって…君が…真凛が好きだと言うから……
昨日碧人からケーキを貰って嬉しそうにしていたから。
俺だって、君の笑う顔が見たい…」