【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


「ありがとうございます。こんな気を遣ってもらって逆に申し訳ないです。 ショートケーキ。実は苺よりメロンの方が好きなんですよね~。嬉しいなあ~」

「そうそう、後真凛さんに頼まれていた物も持ってきましたよ。
先方の方に話は通しておいたので、店舗の地図後で携帯に送っておきます」

「何から何までありがとうございます。小早川さんには本当に感謝しています。今度何かお礼をさせて下さい」

「いえいえお礼なんてお気になさらずに」

小早川さんがうちに頻繁に出入りするようになり、すっかりと気心が知れてしまった。

私はどちらかというと人見知りな方だけど、コミュニケーション能力が高い彼と打ち解けるのに時間は掛からなかった。

伊織さんの前では思わずびくびくしてしまうけれど、小早川さんの前では自然な笑顔がこみ上げる。

「……随分楽しそうだな」

「ひっ!」

いつの間にか、私と小早川さんの間にぬっと入り込んだ伊織さんは、いつも通り不機嫌そうに顔をしかめた。

「ちょ……伊織さんびっくりさせないで下さいよ」