「真凛さん、こんばんは。 こんな時間にお邪魔しちゃって申し訳ないです」
夜だというのに爽やかな朝焼けのような眩しい笑顔を小早川さんが向ける。
不愛想な伊織さんを毎日見ているせいか、思わずその場でくらくらとしてしまう。
「いえいえ全然…! いつもこんな遅くに大変ですね。 後で珈琲をお持ちしますね」
「ありがとう。伊織は用事あると人が寝てる時でも平気で呼び出すから、こんな時間ならまだまだ嬉しい方です。
真凛さんのお陰で少しは規則正しい生活を送るようになったみたいですし」
「私は別に何も…」 していない気がします…!絶対!
「あ、そうだ。これうちの商品で悪いんですけど、お土産です。
夏に発売されたばかりのメロンショートケーキなんですよ。」
そう言って小早川さんはボヤージュの箱を取り出した。
伊織さんは甘い物が大の苦手らしいけれど、私は大好きだ。
小早川さんは必ずうちに来る時お土産を持ってきてくれる。 気が使えて優しくって物腰が柔らかく、どっかの誰かとは大違い…。そんな事を考えながらケーキの箱を受け取る。



