【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


「高級マンションとカードを与えておけばいいと思ってるんでしょ?! 伊織さんが欲しかったのは仕事だけだものね!」
「いやあ…そりゃあそうだけど…
それには間違いはないけど…」

「初めて会った時に私に失礼な事言ったの覚えている?!思ったより普通だとか不細工が来ると思ったとか
とはいえ全然タイプじゃないとか!
私だって自分で美人だったり可愛いタイプじゃないのは分かってるけど、初対面であれはないでしょう?!
もっと人の気持ちを考えて発言してくださいよ!」
「それは……すまないと思っている…」

目の前にいた伊織さんが何重にも重なって見えた。
ぎゃあーと大きな悲鳴が聞こえたけれど、その時にはすっかりと自我を失っていたんだ。

私の体を激しく押さえつける腕と、情けない悲鳴に包まれて私の泥酔事件の夜は明けていくのだった。