【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


だけど……。
伊織さんは初めて慌てふためく姿を見せて、冷蔵庫に入っているお酒を取り出した。

二人で長い時間を過ごしたのは出会って初めてだった。 そしてこの日私は飲みすぎてしまったのだ。 …最近の鬱憤を晴らす如く。

「なんなのよッ突然結婚なんて! おばあちゃんと市ヶ谷さんの約束なんか知らないわよ!」
「うんうん、そうだよなあー」

「大体なーにが桃菜ちゃんを好きになっちゃっただよ?!最初から浮気心があって私の友達に近づいたんだろって!
真凛は強いって何だよ!私の何を知ってるって言うんだよ!半年付き合ったくらいで!」
「だよなあ、そういう男は最低だ。別れて正解だ」

「桃菜も桃菜よ!どうして私にばかり執着するのよッッ。
桃菜の方が可愛いんだから、私の真似ばっかりしないでよー!」
「いや、それは知らんけど」

溜まっていた全てを吐き出して、それを伊織さんがウンウン頷きながら聞いてくれた事だけは覚えている。

酒量は徐々に増えて行き、頭がふわふわし始めた時伊織さんへの不満も飛び出してしまった。
その辺からは、記憶が余りない。 良くない事をしたのだけは覚えている。