「何かこの生活に不満でもあるというのか? お前に渡したブラックカードは好きに使えばいい。
俺は別にお前が何をしようが、何を買おうが興味がない。
どこに行って誰と会おうが、この家から出て行きたければ出て行って構わない。
お前の人生だ。 バツイチにするのはちょっと悪いとは思っているけれど、俺は新しい店舗が無事オープンさえすればいい」
平然とそう言い退ける彼をぎろりと睨みつける。
私は一体どんな顔をしていたというのだろうか。
その顔を見て彼が一瞬たじろいだのが分かった。
「なんですか…その言い草は…。 簡単に離婚なんて言葉口にしないで下さい……!」
母と父は私が幼い頃に離婚してしまった。
私は母に引き取られたけれど、あの時すごく寂しかった。 お父さんが家から出て行くのが悲しくって、でもお母さんも沢山泣いていたから
幼心にも母の前では泣かずに気丈に振舞った。 そんな私の様子に気が付いたおばあちゃんが抱きしめてくれたから、また涙をグッと堪えた。
私達の間には当たり前に子供がいないけれど、それでも離婚なんて言葉を軽々しく口にはして欲しくない。



