【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


市ヶ谷さんとおばあちゃんの昔の約束通り結婚したのはいいけれど、結婚がゴールではないでしょう…?

私はいつまでこの愛のない契約結婚を続ければいいのか…。伊織さん自身はこれからどうしていきたいのか。

それを訊きたかった。

「別に俺はお前が離婚したいならそれでいいけれど?
じーさんは俺達を使って自分の初恋を叶えたかっただけだろうし
取り合えず結婚したんだから、それで満足だろう。 俺は結婚自体に興味はないし、どうでもいい。」

「どうでもいいって…」

結婚は一人の事ではない。二人の事なのに。 そこまで冷たく切り離されると、悔しくて仕方がない。

愛がない結婚なのは重々承知だった。何も知らない伊織さんから愛を得たいとも思わなかったし


けれど将来の事を考えたら不安になった。 この一ヵ月、彼は私と話をしようともしなかった。

私はこの見栄えだけが良いタワーマンションで一生閉じ込められるように暮らして行かなくちゃいけないのだろうか。

そう思うと不安で不安で仕方がなかった。