【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


「何だよ、そのため息は…」

「伊織の言う通り、小早川さんに任せておけば安心って事は分かっているの。
引っかかってるのはそうじゃなくって…
私、桃菜の事知らないうちに傷つけてきたのかなあって考えだせば出すほど止まらなくって」

世話好きでお節介。 自分の性格は十分分かっている。
頼りない母の下で育った不安定な子供だった。

母の面倒を見たり、必要以上に心配をしてしまうのは家族だから当たり前かもしれない。
けれど…桃菜にとってはそれも本当は嫌だったのかもしれない。

心の奥底で本当の友達だとは思っていなかったかもしれない。
そう考える自分の醜さにはうんざりだ。

ごくりと音を立てて水を呑み込んだ伊織さんは、ブラウンの透き通った瞳で全てを見透かすようにこちらを見つめる。

そういえば…伊織さんには嘘がない。

不器用過ぎるほど真っ直ぐな人だから、社交辞令なんて言葉に出さないし、言われた事をそのまま信じる子供のような人だ。

それに引き換え私ときたら、人の顔色をいつも窺って考えすぎな程人の心の裏を読んでしまいたくなる。

…きっとそういうのって見る人から見れば分かってしまって、苛つかせるだけなのだろう。