顔を上げて彼を見つめると、ブラウン色の美しい瞳が澄んだ笑顔で揺れている。
伊織さんの笑顔を見つめるだけで、こんなにも胸がぎゅっと締め付けられるような想いばかり…。
「…伊織さんと朝まで一緒に眠りたい…」
一緒に居たいと素直に伝える事にさえ、口ごもってしまう。
私の言葉に伊織さんはカッと顔を赤らめる。 それを見て、言ってしまった自分の顔にも熱が集まって来るのを感じた。
互いに赤面し合い、まるで言葉を探すように少しの沈黙が流れる。 しかし沈黙の時間さえも、伊織さんと一緒ならば居心地が良いのだ。
そっと私の体を離すと、柔らかく肩を掴んで彼が真剣な顔をする。
「一度しか言わない。」
「え?」
「この先も、この言葉だけは軽々しく使わない。
…君を愛している。
君に出会えた事も
ここに存在する確かな愛も
運命などという簡単な二言では片付けたくない」



