心配そうにこちらを窺う視線に、小さく笑うと次はきょとんした顔でこちらを見つめる。
どうして泣いているんだろう。さっきあんなに泣いたばかりなのに。 どれだけ泣いたって涙は出てくるものなのか。それとも涙腺が決壊してしまったのだろうか。
いや、違う。これはうれし泣きなのだ。
「違います。すごく美味しい。 それに嬉しくて泣いています」
「嬉しくて、泣いている?」
「はい。伊織さんが私の為に慣れない料理をしてくれた事がすごく嬉しくって。
私きっとこの先どんなに美味しい料理を食べたとしても、今日食べたこのご飯の味、忘れないと思います」
泣きながら食べた料理はちょっと塩辛かった。 けれど、絶対この味を一生忘れない。
この日の事を忘れないだろう。
伊織さんが私の泣ける場所を作ってくれた。 …不器用な人なのに、一生懸命私の心と向き合ってくれようとしたんだ。



