【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


振り絞った言葉の中に妙な違和感があった。
それは今まで誰に言い聞かせていた言葉達だったのだろうか。
それとも私が私自身に言い聞かせていた言葉達だったのかもしれない。

辛い時も笑って、出来るだけ前向きな言葉を選んでいく。そうすれば周りが安心するから。 そうやって周りの顔色ばかり窺って生きるのがいつの間にか癖になっていた。

「大丈夫なわけがあるか。

君の前向きさは、時に痛い時がある。それが自分の本心とそぐわないからだ。
心と言葉が伴わない正義感は自分自身を傷つけるだけだ。
もっと自分を大切にしろ」

顔を上げたら、彼の真っ直ぐな瞳が悲しそうに苦しそうに揺れていたんだ。
その顔を見て、喉元から何かがこみ上げて行く。
だっていつも周りから私は強いから大丈夫だって言われ続けて……
けれど

「っ………」

何か言わないと、伊織さんに心配を掛けてしまう。
そう思った瞬間、彼は私を抱きしめていた。 彼の匂い、彼の体温に包まれて、やっと気が付いた。
誰かの胸の中で甘えて、子供のように泣きたかった事を。