「お母さんは、弱い人だから。 伊織さんにも情けない姿を見せてしまいましたね。
けれど大丈夫。立ち直るのには時間が掛かるかもしれないけれど、時間が経てば案外けろりとしている人だから」
「……本当に、大丈夫か?」
にこりと笑って見せると、伊織さんはこちらを見下ろして目を細める。
「大丈夫ですよ。母を慰めるのは慣れっ子ですから。 母は昔から両親に甘やかされて育ってきたので、今は喪失感がどうしても拭えない状態なんだと思います」
「いや、そうじゃない。」
「そうじゃない?」
首を傾げ伊織さんを見上げると、彼はその大きな手で風になびく私の髪の毛をかき上げた。
やっぱり悲しそうな顔。 細めたブラウン色の瞳が、切なげに揺れる。
「お母さんの事だけじゃない。 君は大丈夫なのかと俺は聞いているんだ。」
「わ…たし?」



