【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


「大丈夫?何か嫌な事でもあったの?」

祖母が優しい声で、皺だらけの手を私の頬に置く。
その温かさは幼い頃に何度もくれた優しさそのものだった。

「大丈夫です。」

「私にもね、孫娘がいるの。 真凛ちゃんって言うんだけど
真凛ちゃんもね、あなたみたいに大丈夫っていうのが口癖になっている子なのよ。
小さい頃から大人の事情で苦労ばっかりしてきた子でね、いつも私達に心配かけないようににこにこ笑っていて
悲しい事があっても絶対口出さないの。 とっても優しい子だから余計心配になってしまうのよ。
でも真凛ちゃんがそういう性格になっちゃったのは、私達や周りの大人のせいなのにね。 真凛ちゃんは何も悪くないのにいつも我慢させちゃうばかりで」

皺だらけの祖母の温かい手が、私の手をぎゅっと握る。
いつも穏やかに笑う優しい女性だった。
口数は多い方ではなかったけれど、寂しい子供時代を送っていた私の隣に常にいてくれた人。