「どうして俺と君との問題なのに、そこで碧人を挟まなくちゃいけないんだ!」
「いお…伊織さんと二人きりで話したくないんです。 じゃあ、失礼します」
そう言って彼を振り切るようにその場から逃げた。
だって彼と二人きりでこれ以上いたら、自分の中の感情がコントロールできなくなってついつい本音を言い出してしまいそうなんだもの。
私の本音の全てを吐き出して、彼を困らせたくなかった。
こんなに悲しい想いをするなら、彼との関係を割り切ったままでいれたら良かったのに。
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「あら、こんにちは」
「こんにちは……大分涼しくなりましたね」
おばあちゃんの入居する老人ホームに行くと、祖母はいつも通り穏やかな笑みを浮かべて裏庭でお花を見ていた。
祖母の痴呆は進んでいくばかりで、既に私を孫とは認識出来ていない様だ。
毎回いつも初めましてから始まる。 それは悲しい事でもあったが、大好きなあの頃と同じ笑顔で穏やかに接してくれるから安心出来た。
この状況で市ヶ谷さんの事だけは認識出来るっていうのはある意味すごい事だとも思う。



