【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


仕事に私情は挟まないって出勤した時決めたのに、項垂れた気持ちで午前中の仕事を終えてタイムカードを切る。

最悪だ。 頭を冷やさなくちゃ。
そう思いながらお店を出ると、真っ青な空にはうろこ雲が重なっていた。

そういえば空気も変わって来た気がする。 蒼汰と別れた時はじめじめとした六月だった。 そして直ぐに伊織さんと結婚して
いつの間にか季節が一つ通り過ぎてしまったんだ。 それにさえ気が付かなかった。 あっという間の時間だったのだ。

今日は失敗ばかりだったけど仕事も午前中だけだったし、久しぶりにおばあちゃんのホームに行ってこよう。

実家にも顔を出してお母さんに色々と説明もしなくちゃいけない。  借金の事も…。必要ならば、あの実家を売る事も考えなくてはいけないかもしれない。

そう思い、携帯でバスの時間を確認している時だった。

「真凛……」

後ろから名前を呼ばれびくりと肩が動く。
振り向かなくともそこに立っているのが誰かは分かった。

どくんどくんと心臓が音を立てる。 振り向かないまま、ダッシュで逃げようとしたその時ぎゅっと腕が掴まれて結局掴まってしまった。