【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


「そんな…うちならいつまでだって居ていいんだからね?」

「うん、ありがと。 でもお母さんにも色々報告しなくちゃいけないし、落ち着いたら実家に帰るよ。
ごめ…私疲れちゃって、先に休んでいいかな?」

「真凛ー…本当に無理しないでね。辛いなら辛いって吐き出しちゃっていいんだからね」

「平気平気!大丈夫だよッ」

マンションを出てから直ぐに小早川さんに連絡をした。 とある事情でマンションを出た事と、探されたら困るから一応所在地を。

そして伊織さんには私は平気だと伝えて貰って、居場所は教えないようにと言った。
明海の家で、久しぶりにリビングに布団を敷いて眠ろうとしたが、全然眠気はやって来なかった。


考える事といえば、伊織さんの事ばかりだ。

シンと静まり返った室内で布団をぎゅっと握りしめると、我慢していた涙が再びぽろぽろと零れ落ちてきた。

明海には’平気’’大丈夫’と言ったけれど、全然平気でもないし大丈夫でもない。

平気な振りをしているだけ。大丈夫だって自分に言い聞かせて、本当の自分の気持ちに蓋をし続けた。

その夜携帯には何度も伊織さんから淡泊なメッセージを受信した。

『今どこ?』『大丈夫か?』『お願いだから話をさせて欲しい』  返そうにも指が動かなくて、何も言えずに眠れぬ夜を明かす事になってしまった。