「あんた…桃菜と浮気した男とこれからも結婚生活を続けるつもり? そんなの真凛らしくないじゃない。
大学時代からそういう男は直ぐに見限ってきたじゃない。
だって一度浮気した男は何度だって繰り返すのよ?」
「分かってる。そんなの分かってるけど……
勢いで飛び出してきちゃったけど、本当に伊織さん浮気してたのかな…
私、彼の話も何も聞かずにただただショックで飛び出してきちゃったの…」
それは私の願望でもあったかもしれないけれど。
ただの願望の話なんかしたら、明海はますます呆れ返るに違いない。 ビールの缶に口をつけ、唇を尖らせた彼女は俯く私の両頬をパンっと叩いた。
うるうるとした瞳は私を哀れんでいる。 これ以上明海に心配をかけたくない。首を小さく横に振った後、つとめるように明るく振舞った。
「なんてね、明海の言う通りだよッ…。 彼との事はうまく言って別れられるようにするよ。
今日は突然来て泊めてもらちゃってごめんね。
明海に迷惑にならないように直ぐに出て行くからね」



