【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


それだけ言い捨てると、音を立てて扉を開けて再び走り出してしまった。

碧人は心底疲れ切ったようでソファーに腰をおろすと、頭を抱えて「はぁー」と長いため息を吐く。

そういえば、碧人らしくもない。 髪も乱れていて、服装もスーツではない。きっと家に居て寛いでいた所だったのだろう。

ソファーに両腕を投げ出して「疲れるわ…」と小さく呟いた。 責められている気持ちになったが、仕事を終えてから碧人を呼び出したのは俺なので、責任は感じている。

「だから俺、あれだけ言ったよな。あの子には警戒しろって」

「そんな事言われたって…真凛の親友だといえば信じてしまうではないか!」

「単細胞め……」

ため息混じりに呆れた声を出す碧人を前に、何も言えなくなる。
真凛に嫌な想いをさせたのは事実なわけだから。