「可哀想な人ですね。 哀れです」
一言言い放った言葉。 碧人は心から同情したような眼差しを桃菜に向けた。
彼女はそれが不服だったらしく、ぐしゃぐしゃに顔を歪める。
「そうやって手に入れた物は虚しくなかったですか?」
碧人の問いかけに桃菜は眉をひそめた。 彼女の眉は途端に垂れ下がり、顔を真っ赤に染め上げている。
桃菜さん、そう言って彼女の腕を掴もうとした碧人の手を、桃菜は思いっきり振り払う。
「あんたなんかに私の気持ちは分かんない!」
ソファーの上に置いてあったバックを手に持ったかと思えば、桃菜は玄関まで猛スピードで走り出してしまった。
くるりとこちらを振り返ったかと思えば、気の強そうな眼差しを投げかける。
「伊織んや碧人さんみたいに恵まれてる人には絶対に分からない…!」



