【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


「いや、俺は君より真凛の方がいいけれど」

はっきりとそう言うと、碧人はうんうんと何度も頷いた。

「俺も好感度的には真凛さんの方がずっと高いけど。
真凛さんは人の事が気遣えるし、優しい気持ちを持っている人だから
俺も真凛さんの方がいいです」

「なッ……お前、人の妻をそういう目で見るのをやめろ。
は!まさかお前この機会をいい事に俺から真凛を奪おうとしているのではないか?」

碧人は心底呆れたような顔をし、ふっと小さく苦笑いをした。

「どうしてそこまでひん曲がった解釈が出来るんだ。
真凛さんの人柄が良いのは明らかだよ。 こっそり働いているボヤージュの支店の評判を訊きに行ったけれど、仕事も真面目に取り組んでいてパートさん達からも良く思われているみたいだし
それにそうじゃなかったら伊織と生活なんか出来ないだろう」

「それはそうだが、お前は怪しいんだよ。 真凛だって小早川さんはかっこいくて優しくていい人だって無駄に評価が高いからな。
人の知らない所で手を出そうとしているんじゃないか?!
真凛はすごいいい女だが、既に俺と結婚して市ヶ谷真凛になっているんだ。
いくら碧人だろうが手を出したらただじゃおかないからな。」