【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


ぴしゃりと碧人が言い放つと、桃菜は大きな瞳をつりあげて怒りを露わにした。

碧人とは昔からの友人であるがよく周りを見ている男であるとは思っていた。 そういう能力が買われ、祖父のお気に入りでもあったのだが
…俺はちっとも気が付かなかった。やけに馴れ馴れしい女だとは思っていたが、自分の感情を表に出して言いたい事もすぐ口にする。そういう所には少しも嫌悪感を抱かずに居た。

だから真凛が彼女を嫌がっている事にも全然気が付いていなかったのだ。 どれだけ俺は鈍感なんだ。 その結果、真凛を傷つける形になってしまった。

「う……本当に親友だもんッ…! 碧人さんに桃菜と真凛ちゃんの積み重ねて来た歴史なんか分からないでしょう?」

「二人の積み重ねて来た歴史は分かりませんが、本当に親友で大切になさっているお友達ならば
そのお友達の婚姻相手に手を出すとは到底思えないんですが?」

「そ、それはちが…!だって伊織んだってその気だったから、その気持ちに桃菜は答えようとしただけだもん…」