【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


「伊織さんにとっては不本意な結婚かもしれないけど、夫婦として歩み寄ろうとする努力は大切だ」と言われた時、妙に納得してしまった。

一通り俺への不満をぶつけた後、彼女は子供のように声を上げて泣きだしたのにはびっくりしたが……

もしかしたら彼女は、言いたい事を我慢してしまうタイプの人間なのかもしれない。 酔った時にだけ本音が出て、感情表現も豊かになるのかもしれない。

そういった不器用なタイプだった。

「実家に居た時は家族で一日一回は一緒にご飯を食べる事を決めていた。
だから私の事を好きじゃなくてもいいから、一日一回は伊織さんとご飯が食べたい……」

そう言った言葉が俺には印象的で、何故かハッとした。

今まで誰かと一緒にご飯を食べたいと言われた事があっただろうか。 いつの日にか食事を取るのも億劫になっていた。

そしてその日真凛は酒を散々飲んで、怒ったり泣いたり 時には突然笑いだして、自分の過去の話や家族の話を楽しそうにし出した。