脱ぎ捨てられたパジャマの上着を手に取って、彼女の頭に無理やり被らせると「きゃん!」と小型犬のような甲高い叫び声を上げる。

ぷくりと頬を膨らませて、こちらを上目遣いで見つめてくる。  …マジで一体何のつもりだ。

「別にいいじゃないか。一回寝るくらい」

「ね、寝るって…!俺は真凛と結婚しているんだ。 それに真凛は君の親友だろう?」

「だってぇ、伊織ん…桃菜と一回ヤリたくないですか?
真凛ちゃんには一切その気がないわけでしょう?」

「な、何を…」

だから一体さっきからこの女は何を言っているのだ。
出会った時から馴れ馴れしいタイプだとは思っていたが、特別気にした事はなかった。

真凛の親友だといって家を失くし困っているからとの事で暫くの間このマンションに居る事を許可した。

「だって真凛ちゃんと伊織んって結婚しているっていうのに全然夫婦らしくないんだもん。
寝室だって別だし、ラブラブもしていないし、どちらかと言えばドライな関係だもん。
伊織んだって別に真凛ちゃんが好きで結婚したわけじゃないでしょう? そう真凛ちゃんが言ってたもん」