頭の上から指先まで自分で自分じゃない位体が熱い。
触れられた事なんて、ない。
抱きしめられていると気が付いた時、 頬に丁度伊織さんの心臓が充る。
それは私の心臓と同じくらい、ドキドキと鼓動を刻んでいた。
「いお、伊織さん!」
「もっと君の考えている事を知りたい。俺全然知らないんだ。
真凛が何をしたら傷つくのかも、何をしたら嬉しいかも。
もっと自分の気持ちをはっきりと口にして欲しい」
彼の胸の中、目を閉じる。 思っていたよりも厚い胸板だった。 華奢だとばかり思っていたのに。
彼の声が耳元に優しく響いている。 こんな風に優しく物を言う人だったか。
’伊織さんは私の事をどう思っているのですか?’ 訊きたい事をそのまま口にすれば、心がはち切れそうになるに決まっている。
抱き寄せられた体そのまま身を任せ、じんわりと胸を熱くする幸せに酔いしれていたいのに。



