そうため息を落とすと、彼は不服そうに顔をしかめる。
だって仕方がないじゃない。
桃菜がちゃんと仕事をしないのが悪い。 男性社員とくっちゃべってばかりで、ろくに仕事を覚えようともしないから周りを苛つかせるのは仕方がない。
そう私から言ってしまえば、本当に私こそが桃菜に意地悪をしているみたいだ。
黙り込んだ私を見て、伊織さんのブラウンの瞳が揺れる。
「どうした?何か言いたい事があればハッキリ言えばいい」
「…別に言いたい事なんてないですけど…」
「言いたい事はないって顔じゃないけどな。 君はいつもそうだな。何かあっても自分の気持ちや考えを言おうとしないのだから」
「何でもかんでも口に出せばいいって事ではないと思いますッ」
「口に出さなければ分からない事もあると思うのだが?」
「だからそういう問題じゃないんですよッ…。人間関係を円滑に進める為には時には言いたい事を我慢してグッと堪えなくちゃいけない事もあるわけで!」
「一体誰との人間関係を円滑に進めたいのだか…」



