【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


「真凛ちゃんは伊織んの事好き?」

「は?」

上目づかいでこちらを見つめた桃菜の瞳はキラキラと輝いていて、物語から飛び出したヒロインのようだ。

私だって男だったら桃菜に夢中になると思う。 女の子が持つ可愛いを全て兼ね備えているような子なのだ。

「だから、私と伊織さんはそういうのじゃないって」

「本当にそぉなの~?真凛ちゃん、伊織んの事好きそうだけど~」

「だから私達の結婚はそういう好きとか嫌いとかじゃなくって」

「じゃあ、いつか離婚してくれる?」

「はい?」

ふんわりと笑ったままだったけれど、桃菜にしては真面目な顔をしてとんでもない事を言い出す。

「だってそうじゃない。伊織んと真凛ちゃんの間に愛がないなら、いつか離婚する事になるでしょう?
そうしたら、桃菜にもチャンスがあるかな~って思って。
それに伊織ん、桃菜の素直な所すごくいいねって言ってたしね」