伊織さんの腕を掴みながら桃菜は私の方へニヤリと笑みを浮かべた。
嫌な予感がする。
「伊織んは本当に優しいなあ~。碧人さんにも見習ってもらいたいものだよッ」
「碧人に何かされたか?」
「聞いて下さいよぉ~~~ッ。碧人さんって桃菜に小言ばっかり言って小姑みたいなんですよぉ~」
「はは、碧人はそういう所があるよな。俺もいつも小言ばかり言われてる」
「伊織んも?! もぉ~本当に嫌になりますよねぇ~」
仲の良い二人を見て、伊織さんにとって念願のお店が出せるのならば、結婚相手は誰でも良かったんじゃないだろうか。
むしろ、意思表示がはっきりと出来て可愛らしい桃菜の方がずっと良かったんじゃあ…。
その言葉も勿論言い出せずに、呑み込んだ。
「真凛さん、顔色が悪いですけど大丈夫ですか? 今日は疲れましたか?」
「私は大丈夫です。それより小早川さん、今日は桃菜と一日大変だったでしょう?
面倒見てくれてありがとうございます」



