「確かにそうだな。とても可愛らしい。」
「あ、アハ、ですよね。」
それ以上何も言えなくて、にこにこと微笑む伊織さんに愛想笑いしか出来なかった。
もしかして伊織さんは桃菜に好意を持っているんじゃないだろうか。
そうだとしたら、いつかまた蒼汰や今までの男性と同じ事が起こってしまうのではないか。
結婚しているんだもの、ありえない。 そう何度も言い聞かせてきたけれど、私と伊織さんの間にはそもそも愛情なんてなかったんだ。
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「うわあ!伊織ん、本当にクッキー買って来てくれたのー?
桃菜超嬉しい。ありがとうねー!」
自宅に到着すると、既に桃菜と小早川さんは帰ってきていた。
伊織さんの手からアレンセルトのクッキーを受け取った桃菜は、可愛らしく微笑み伊織さんの腕を自然に掴んだ。
伊織さんも満更でもなさそうに笑っていた。



