何気なしに言った言葉だったけれど、伊織さんはパアっと顔を輝かせてこちらに身を乗り出した。
「まだ店舗を見つけただけで工事の途中だけど、今度行って見るか?」
「い、いいんですか?私なんかが行っても」
「君にだから見せたいんだよ。 お店が出来たら一番に招待したい。 真凛は甘い物が好きだからな」
そういう言葉を言われると、勘違いもしたくなるものだ。
いつからだったのだろう。彼の何気ない仕草に胸がときめくようになってしまったのは。
胸がトクンと甘い高鳴りを見せて、とっても幸せな気持ちになった。
お揃いの結婚指輪と美味しい料理。 それは一人では作れない物。
きっと今、目の前に伊織さんが居て、無邪気な笑顔を見せてくれるから
私はこんなに幸せな気持ちになるのだろう。 それを当たり前だって思いたくないのに。当たり前だと思えば人はもっと欲張りになってしまう生き物だから。
あくまでも私と伊織さんは契約上の夫婦なだけ。そこには本物の愛なんて、ない。



