【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


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それからも百貨店で伊織さんは様々な物を私に勧めてきたが、それは全てお断りした。

彼はまだ納得のいかない表情をしていたけれど、私には指輪一つで充分すぎるほど自分には過ぎた幸せだ。

その後は彼の好きだというインテリアショップなどに数店行って、それもとても楽しかった。


彼の住むタワーマンションに来たばかりの頃には気が付かなかったけれど、彼のマンションにある家具はどれもシンプルで素敵な物だった。

どうやらインテリアだけではなく、食器などにも拘りがあるらしく海外からわざわざ取り寄せた物もあるらしい。

お菓子には全く興味が持てないけれど、インテリアは昔から好きだという話を目をキラキラさせながら話してくれた。

伊織さんが好きな物の話を聞くのを、私は好きだった。 その時彼は少年のような瞳になって本当に楽しそうにお喋りをするからだ。