宝石店から解放されるとドッと疲れがこみ上げて来た。
けれど伊織さんが嬉しそうな顔で自分の左手を見つめていたので、何とも言えない気持ちになってしまう。
私は結局小さなひと粒ダイヤがついた指輪を買って貰った。 伊織さんは米粒と表現したが、小さくたって本物の立派なダイヤだ。 照明に照らすとキラキラと輝いてとても綺麗だ。
「あの、伊織さん」
「何だ?」
「ありがとうございます。色々とうるさく言ってしまったけれど、指輪嬉しかったです…」
だから正直な気持ちを素直に言ったら、伊織さんのブラウンの瞳はダイヤと同じようにキラキラと輝いていた。
「全然いいんだよ。 やっぱり自分達で選んだ結婚指輪はいいな。 結婚したって気持ちになれる」
伊織さんの無垢な笑顔は私をドキドキさせる。
それに素直に嬉しかったんだ。
どんな高級な物より伊織さんに選んでもらって、一緒につけれる方が嬉しいに決まっている。
ぎゅっと握りしめた左手は、自分で思っていたよりずっと熱かった。



