【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


確かに。
あの結婚指輪は相当高い物だったと思うが、結婚式で使って以来タンスの肥やしとなっている。
あれは建前上用意された物で、伊織さんだってつけていない。

「それにあれは俺が用意した物じゃない。 式の前に碧人が選んできた物だ」

「でも私、あの指輪が気に入っているから他の物はいらない」

どんな形だったかも覚えていない指輪を言い訳にプレゼント阻止作戦だ。
しかしそう言えば、ますます不機嫌そうに眉をしかめる。

「何だそれ。俺が選んだ物より碧人が選んだ物の方がいいって言う事か?」

「ですが、伊織さんのお金で買った物に間違えはありませんし!」

「何かムカついてきた。 やっぱり結婚指輪は選び直そう。
俺は碧人が選んだ物を付けたくはない。 だから新しい物を買おう。
ちょっと、そこの君。 結婚指輪を何点か出してくれないか?」

それなら初めから自分で選べば良かったでしょうがー! 面倒くさいからって買いにいかせたのは自分でしょう?そう言いたかったがこれ以上伊織さんの機嫌を損ねたくなかったのでグッと堪えた。

やっぱり伊織さんの考えている事はよく分からない。