車内では相変わらず気まずい空気が流れていた。
まさに心ここに在らず。 正直桃菜の事がすっごく気になる。
小早川さんが面倒見の良い人だっていうのは分かっている。 けれどもしかしたら桃菜がすっごく迷惑をかけてるかもしれない。 それを考えれば気が気ではなかった。
そんな悶々とした空気の中、伊織さんが私を連れて来たのは都内にある百貨店だった。
「今日は買い物をしようと思って」
「買い物ですか」
「ああ、まずは適当にフロアーを回ろう。 気に入った物があったら言ってくれ」
百貨店で買い物をする事は余りない。
買い物は基本的にショッピングモールでする。 だから余り立ち寄った事のない場所でもある。
…そりゃあ伊織さんは全身ブランド物なのだろうけど。
てっきりと彼自身の買い物に付き合わされるかと思いきや、彼が回るフロアーはレディースの物ばかりだった。
それは流行に疎い私でも知る有名ブランド店ばかりだ。値段を見るだけで目玉が飛び出しそうになるのを押さえる。



