【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


「お前達二人がヒソヒソと会話をしている間ずっと後ろに居た。」

「やだ、盗み聞きみたいな真似止めて下さいよッ」

「フンッ。よく話は聞こえなかったが’小早川さんは優しい人’だという言葉はばっちりと聞こえた。
あいつが腹黒い人間だって何度言えば理解するんだ」

「友達の事そういう風に言うの良くないですよ。 小早川さんは伊織さんが大切みたいですし。
ただ私は伊織さんと小早川さんの関係性が羨ましいだけですからッ」

「か、関係性~?!」

「それより家の事で用事があるんでしょう?私達も早く行きましょう」

ふいっと彼の前を横切って、出かける準備を始める。
伊織さんは一人で悶々と何かに悩んでいるようだったけれど、それは無視した。

近頃桃菜がやって来て桃菜に伊織さんを取られっぱなしで二人で会話が出来ていない。 何故か話題の中心はいつも桃菜になってしまう。

何も言わなかったけれど伊織さんに対して素っ気ない態度を取ってしまう自分がいた。

勝手に拗ねている自分が悪い。 小早川さんのように自分が桃菜を大切に思えず鬱陶しく思ってしまうのが悪い。

久しぶりの伊織さんと二人きりの時間だというのに、そんな想いを抱えているか心から楽しめなさそうだ。