「きゃあ!伊織さんありがとうございますぅ~!
こんな理解のある旦那さんがいる真凛ちゃんが羨ましいです~。
伊織さん、真凛ちゃん、暫くお世話になりますッ!」
桃菜はとびきりの笑顔を巻き散らかしていたけれど
私は泣きたくなった。
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確かに伊織さんのマンションには使っていない部屋があった。 そもそも私達は契約上結婚しただけであって未だに寝室も別々。
私の自由に使える部屋があって、伊織さんが書斎兼寝室にしている部屋がある。 後一室空いていて伊織さんはその部屋を私に自由に使っていいと言った。
しかし自分の部屋一室だけでも十分な広さだったのである。 だから確かに一室空いてはいるのだが…。
「うわあ…!真凛ちゃんのベッドふかふかだねぇ~ッ。お姫様のベッドみたい~素敵」
何もない部屋に小早川さんがさっそく布団を一組用意してくれた。 それ以外も必要な物があれば何でも言って欲しいと言っていた。
桃菜はさっそく我儘全開で化粧水やら美顔器など生活に一切必要のない物をリクエストしていた。 …いつまで居座るつもりよッ!
そして今は私のベッドの上でごろごろと気持ちよさそうに転がる。 先ほど前での泣き顔が嘘の様だ。



