【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


桃菜は褒め上手である。 男性限定ではあったが。
すごいとかかっこいいとかすぐに口に出すと大概の男性は気分が良くなってしまうものらしい。
当の伊織さんはというと…

「インテリアには少し拘りがあるんだ」

満更でもなさそうで嫌な気分になる。

「そうなんですねぇ~。素敵です~。センスがあるって感じで。
いいなあ、こんな素敵なお家で暮らせる真凛ちゃんが羨ましいです~」

「まあ、まあな。」

伊織さんの脳内は複雑そうに見えて案外シンプルだ。 選ぶインテリアと一緒だ。
だから直球な桃菜の言葉にも悪い気はしていないようで、それどころか顔が綻んでいる。
そして桃菜の事を何も知らない伊織さんはとんでもない事を口にしてしまうのだ。

「ごほん、桃菜と言ったか。 どうやら真凛の親友のようだな。
話を聞く限りマンションを追い出されて困っているようで
真凛、どうだろうか。お友達がすごく困っているようだ。 うちならば広いし使っていない部屋もある。
彼女が落ち着くまでうちに居て貰えばいいと俺は思う。 まあ、つ…妻の親友の頼みだからな」

どうしてそうなるのよー?!