【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない


お母さんめ…。プライバシーつーもんはないのだろうか。 何でも聞かれた事をぽんぽんと答えるもんじゃないわよ。

抱き着かれたら、久々に桃菜の甘ったるい香水が鼻を掠める。

ぎゅっと抱き着くと私の胸の中で顔を上げて、にっこりと嬉しそうに微笑む。 …まさに天使の微笑みかもしれない。

桃菜の笑顔を見ると、今までにされた事をすっかりと忘れてしまうから不思議だ。

「仕事で自宅に来たらちょうどエントランスに蛯原さんがいたものですから」

そう小早川さんが言うと、私の腕をぎゅっと握りしめたまま桃菜が頬をぷくりと膨らませる。

「もぉ、碧人さんってば…蛯原さんって言うの止めて下さいよぉ。桃菜でいいって言ったのに~
あのね~、真凛ちゃん碧人さんったらね桃菜の事を不審がって大変だったんだから」

いや、それは当たり前なんじゃないか。 アポの一つもなく会いに来るところが桃菜らしいっちゃ桃菜らしいけど。

「いや、申し訳ありません。 蛯原さんを疑っていたというわけではなく…やはり見ず知らずの人間を伊織の家に上げる訳にはいきませんし」

小早川さんの言う事は最もだ。