神永さんが怪我をしてから一週間が経った。
特に攻め込まれる事もなく、清宮では何かのイタズラだろうと思う者が沢山いた。
そんな時、姫野組の大和から連絡が入った。
滅多に電話指してこない癖に、出ないと煩いのよね…。
「何?姫野に変わりはない?」
渋々電話に出た私の声は、物凄くやる気のない声。
我ながら笑ってしまいそうなほど。
『あぁ。変わりねぇよ。…あのな…その。』
妙に歯切れの悪い言い方ね。
変なところでズバッと突っ込んでくる性格なのに、時折ヘタレな部分が見え隠れする。
「何よ。気持ち悪いわね。」
『…優杏が、お前に会わせてくれって煩くてさ。今日少し姫野に戻ってきてくれねぇか?』
ユア?
ゆあ?
優杏?
「…へ?優杏さん?」
何で?
『悪いな。何やら話さないといけないらしくてさ。』
まって?
私、優杏さんとの接点なんかないんですけど。
会ったことないし。
早急に話さないといけないこと?
「…わかったわ。今日なら時間がとれそうだから…じゃぁ、10分後に迎えに来て。」
「こっちの都合で悪いな。よろしく頼みます。」
大和はそう言うと電話を切り、姫野に行く準備をして翔ちゃんの部屋へと向かう。
何だろう。
ソワソワする。
嫌な予感ではない気がするが、変にソワソワして気持ちが悪い。
そう考えていると、気が付いたら翔ちゃんの部屋の前に着いていた。
「翔ちゃん?いる?」
「あぁ。」
深呼吸をしてから部屋に入ると、大きなソファーに座りこっちを向いていた翔ちゃん。
「こんな時に申し訳ないんだけど、大和の彼女さん(まだだけど予定)が私に話したいことがあるみたいで、少し姫野に行ってくるね。」
まだ彼女じゃねーだろと私に笑みをこぼす。
翔ちゃんも、大和のヘタレ加減を知ってるからね。
会うたびに翔ちゃんは大和のことを揶揄する。
「姫野へ送ってくか?」
「大丈夫。大和が迎えを送ってくれるから。」
「そうか、なら心配ねぇな。本当なら付いていきてぇが、はずせない仕事があってな。」
「ううん、大丈夫。忙しいのにごめんね?」
そう言った私に、翔ちゃんは謝ることはなにもしてねぇだろ?と返す。
私は存在するだけで迷惑を掛けてるんだよ。
うつむいた私に、翔ちゃんは頭を撫でながら大和に宜しくと伝えてと言うと、仕事を再開させた。

