「姫野と交友を持っている清宮が、愚行を働いたな。」

空気がビリリっと感じるほどの怒り。

「しっかりと説明責任を果たさなかった若頭である翔樹…お前の責任だ。」

「申し訳ありません。」

俺は親父である組長に頭を下げる。
それに続くよう晶、礼、慶一郎も頭を下げる。

莉依がどうして清宮に来たか。

今の姿になるまで、どんな苦しいことが莉依にあったのか。

今莉依に降りかかってきているものはどんなものか。

その全部に澤田組が関わっていることを親父は淡々と組員達に説明した。

組員達からは、「そんな…。」「とんでもないことを…。」と悔やむ声が聞こえてきた。

中堅以上の組員は、澤田に対しての怒りが滲み出ている。

「さて。処分をどうするとしよう…。」

「あら、あなた。悩む必要なんてありませんわ。」

責任の重さを感じられるような処罰を考えていたんだろう。
だが大姐であるお袋は、手にしていた扇子をバッとたたみ、冷たい目を向ける。

親父である組長よりも敵に回していけない人物だ。

「若頭たちには、一刻も早く澤田のことについて解決してもらうこと。組の仕事も倍以上してもらいながらね。物申してた組員達には、更にその倍の仕事量をこなしてもらいましょう。」

お袋の目には、"この決定は絶対"というのが込められていた。

最後に止めの一言。

「あ、全体の倍の仕事量ではなくてよ?個人個人の仕事量を倍に。手伝ってもおうなんてしたら…分かってるわよね?」

有無を言わさぬ圧力。
流石、長年親父を隣で支え、共に清宮を担ってきたお袋。

「そう言うことだ。責務は果たせ。莉依ちゃんの事もだ。」

「承知。」

俺の言葉を合図に、晶たちをはじめとする組員も返事をする。

そして解散と伝え、組員は持ち場に戻る。

「翔樹、莉依ちゃんは?」

「ダメージは凄いだろうな。俺がここに来る前、過呼吸を起こしていた。今は落ち着いて眠ってる。」

親父やお袋は、先ほどの恐ろしい姿だったとは思えぬほど優しく心配の眼差しをしていた。

「組員たちに示しがつくように、早く解決せよ。」

その言葉を聞き、親父たちと別れた。

莉依のためにも、課せられた仕事をこなし、必ず澤田から守ってみせる。

俺は強く、強く誓った。



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