礼side
組員が、姫ちゃんの事を悪く言っとるのが聞こえてきて、思わず怒鳴ってしまった。
若である翔樹が下りてこんということは、相当仕事に集中しているんやな。
まさか、姫ちゃんに聞かれとるとは思いもよらんかった…。
"聞こえてたよ…。でも、もう少しだけ…もう少しだけ…。ちゃんとするから…。"
そう言う姫ちゃんは、ホンマに儚く、今にも消えてしまいそうな感じやった。
「これは若に報告せなあかん。自分ら、何をしたのかよーく考えるんやな。覚悟しとれよ?」
冷たく、ドスの効いた声で組員に言い放つ。
翔樹には、姫ちゃんが眠った夜に報告やな。
今報告したら、とんでもないことになる。
只でさえ仕事で常にイライラしとるのに、姫ちゃんの事となると、般若化するからのう。
それにしても、澤田の奴は何が目的なんや?
鴻巣も何者や。
澤田の組員らしいが、それすらも怪しいらしいやん。
やっと笑えるようになっとったんに、澤田のヤロウ…。
きっと、近い時期に抗争が必ずあるはずや。
組の奴らももっと鍛えとかなあかんな。
さっきの奴らはシバきながらや。
姫ちゃんがはよう、澤田の呪縛から解放されるよう願うばかりや…。
何も起こらんとエエが…。
sideend

