何かを忘れているー…。

大切な何かをー…。

「…い!莉…!…依…莉依!」

私を呼ぶ声に意識を戻す。

目を開けると、翔ちゃんと、龍也さんが居た。

「姫ちゃん、大丈夫か?」

翔ちゃんが私を抱き上げ、その横で龍也さんが声をかける。

でも、私は壊れた人形のように言葉を繰り返す…。

「鴻巣…澤田の仲間…私が殺した…。」

途切れ途切れに言った私の言葉に、2人が反応する。

「鴻巣!?どこでそれを!?」

翔ちゃんの問いかけにも耳を貸さず、ひたすら同じことを言う私。

私が壊した…。

「ここで、もしかしたら知ってしまったのかもしれない。」

龍也さんの言葉に翔ちゃんは眉を寄せる。

「若、こっちに清水の若頭が倒れてました。」

「こいつが…。清宮に連れていけ。拷問してでも吐かせるぞ。」

私を強く抱き締めながら、翔ちゃんは車に乗り、倉庫を後にする。

でもそんなことも気にならないくらい、私は堕ちていた…。

「両親を…殺した…。」

私は、壊れた人形のように言葉を繰り返す。

まるで、自分に言い聞かせるように…。

「や…だ…人…殺し…殺した…コロシタ…。」

「莉依、大丈夫だ。お前は悪くない。」

翔ちゃんは一生懸命私を宥める。

強く強く…。
私という存在が居なくならないように…。

それでも私は、涙を流しながら繰り返す。

私はー…。

両親だけでなくー…。

もうひと夫婦をも…。


コロシター…。