ーっ…。

コンクリートの冷たさで目を覚ます。

私は確か…。

腕と足を縛られている状態に気付き、清水組に連れ去られたと確信した。

"人殺し"

気を失う前の、清水の言葉を思い出し、体が強ばる。

震えだす体が恐さを倍増させてしまう。

「やぁ。お姫様のお目覚めだね。」

「ー!?」

不覚だ。
恐怖から、人が近づいているのとに気が付かなかった。

「清…水…。」

「いいね、その恐怖に怯える表情。」

清水組の若は、気持ち悪い笑みをこぼしながら、私の髪を掴んだ。

「いっ…。」

「俺は姫野組が壊れるのを楽しみにしてんだ。姫野に邪魔されたからな。」

髪をつかむ手に力が入り、思わず目をつむる。

「10年前、お前の両親は澤田の不祥事を嗅ぎ付けたと同時に、清水組の不正をも暴いた。そりゃ清水はボロボロよ。」

そう言って、私をコンクリートの床に投げ飛ばす。

痛みで声がでない。

「ーッ。私を拐って…、何がしたいの…?」

やっとのことで出した言葉。

10年前に事件があったけれど、私はあの場に飛び出しただけで、内容は知らない。

私を拐って何かを得られるのかが、全く分からなかった。

清水は私を睨み付け、驚くことを口にした。

「姫野が…お前の親父が隠した情報を探してる。」

…情報?

「澤田の不祥事と、清水の不正の証拠さ。」

「証拠なんて、私は持ってないわ。」

痛みに耐えながら、睨み付ける私を鼻で笑う清水。

「あとはお前の両親と共に死んだ、中里の娘の居どころを吐け。」

中里…。

「中里?知るわけないじゃない。娘すら知らないわ。」

最近知った中里という存在。
だけど、私の記憶にその2人と娘は居ない。

「知らないはずないさ。お前の両親の側近だったんだからな。」

その言葉に、私は言葉がでなかった。

側近…だった?

父と母の名の次に記載されていた2人の名前ー…。

彼らは、姫野の組員?