俺が考えていると、扉が開き、神子芝と龍也の妹が入ってきた。

「お前ら…怪我は?」

俺の声に震えながらも、大丈夫と言いながら言葉を続けた。

「清宮の若さん…。今、莉依の精神はボロボロかもしれない。」

「清水組の若という人が、"人殺し"と言ったんです。莉依さんはその瞬間意識を失くし、それを待っていたかのように連れ去って行きました。」

2人は、莉依を守れなかったと悔やんでいる。

「どういうことだ?」

「…澤田に頼まれたと…言っておりました。ですが…ーッ…澤田は刑務所のはずですよね。」

痛みに耐えながら、鍋島が続けた。

「…もし、澤田が刑務所から出て本当に清水に指示を出しているのであれば…莉依さんが危険です…。」

清水は、澤田に指示されて莉依を連れ去ったということか。

でも澤田は何故莉依にこだわる?

姫野のトップシークレットといい、澤田は何か知っているのか?

「出たぞ。B地区の海沿いの倉庫だ。」

慶一郎が莉依の居場所を突き止めた。

「それと神子芝と川城のどちらかの携帯も見せてもらったが、ハッキングされた形跡はなかった。何処からショッピングモールにいるっていう情報を得たのか…。」

「ハッキングしていないのに、場所が筒抜けだったと言うことか?」

やり手の組員が居るってことか?
俺が考えていると、神子芝が口を開く。

「…雑貨店に行った際に、莉依があるネックレスを見つけたんです。」

ネックレス?

「学校で騒ぎがあったとき、黒龍が着けていたネックレスです。」

そう言って、懐からそのネックレスを取り出す。

とっさの判断でやったのか知らないが、あまり指紋が付かないように袋に入れてあった。

「莉依さんは、その前からキョロキョロと周りを気にされていました。何かのアクションがあったのかもしれませんわ。」

よく莉依の事を見てくれているんだな。

この2人が居なければ、ちょっとしたことでも見逃していただろう。

何かのアクションがあったということは、莉依は脅されていた?

いや、そしたら毎日表情にでる。
俺には必ず少しでも気になったことは報告はしてくれている。

もしかすると、ショッピングモール先で…。

俺は2人にゆっくり休めと言い、組員たちに指示を出す。

「晶、ここに残って2人のケアを頼む。礼と慶一郎、他の組員は、ふた手に分かれ、ここに残る組と俺についてくる組に分かれろ。龍也、行くぞ。」

「あぁ。鍋島はここに残れ。一部隊行くぞ。」

俺らは急いで車にのり、海沿いの倉庫に急いだ。

澤田が絡んでいると、莉依は自分を見失ってしまう。

頼む…。
間に合ってくれ…。



sideend