「ごめんごめん。言ってたわ。」

『全く。で?何調べて欲しいんだ?』

電話越しに、俺に連絡してくるなんて、姫野で調べてほしいことがあるんだろ?と自信満々に言う大和。

もしかしたら、幼い頃の事件と繋がってるのではないか…?

そう思うと、身体が震えてくる。

こんなことで震えてどうすんのよ…。
向き合わないと…。

深呼吸して、震える身体を落ち着かせる。

「中里裕翔と中里杏里を調べて。」

『中里?何でだ?何か関わりが?』

「この前有馬さんに10年前の…、姫野の事件の書類を見せてもらったの。そこには私の両親の名前の他に、中里裕翔と中里杏里の名が記されてた。死亡者の欄に。」

『は?職権濫用か?』

翔ちゃんと同じ事を言った大和に、思わず笑みが溢れる。

「うん。あと、新しく相棒になった鴻巣さんって人も紹介されたよ。あ…。」

『なんだよ。』

言おうか迷う。

鴻巣さんに対して、危険だと体が反応したこと。

確信はない。
でも…味方だけど、敵かもしれない。

「その鴻巣さんに、何で姫野は狙われたと思う?って、言われた。」

『なんだよそれ。何者だ?』

「うん。でも、その後すぐに、有馬さんと話してたから、何でそんなこと言ったのか分からなくて…。」

『そうか。じゃぁ、まずは中里裕翔中と里杏里のこと、鴻巣ってやつも調べとく。何かあれば連絡する。』

そう言って電話を切った。

私がもう、抜け出せない闇に来ていることに全く気が付かなかった。

そしてこの先もずっと、大和たちをも巻き込んでしまうことを、このときの私には、知るよしもなかったー…。