「翔ちゃん、嫌なら別荘で待ってればよかったのに。」

「は?女だけで行かせられるかよ。」

そう言うと、ふいっと顔をそらされた。

機嫌損ねた?
拗ねた?

ん?
ちょっとまって?

女だけでって…。

「組員さんたちがいるじゃん!女だけじゃないし。」

「お前なぁ…。」

「姫ちゃん、それはきっつい話やで?」

礼ちゃんが横入りしてきた。

きつい話?
何でキツいのよ…。

「若はただ、姫を心配しているんですよ。」

「ま、清宮の若は生半可な心配じゃ無さそうだけどな。」

「川城の若に同じくだな。うちの若は、姫のことになるとポンコツになる。」

…慶ちゃん、さりげなく酷いこと言ってません?

「生半可な心配じゃ無さそう?」

「昔から翔樹は、姫が絡む抗争があると、片っ端から鬼のように潰してたからな。」

慶ちゃんは、メガネの奥の目を細め、ほんのり笑いながら腕を組んで私に言ってきた。
その姿は、翔ちゃんに負けず劣らず美しい。
懐かしさからなのか、慶ちゃん、言葉が戻ってるし。