「久しぶりだな。変わらねぇなお前ら。」
ニカッと大きく笑ったときにでる目尻のシワは、年季のはいったもの。
修羅場を潜ってきた有馬さんの苦労のシワ。
「ところで姫ちゃん。俺はこの件、必ず澤田が絡んでると見てる。辛い想いを思い出させて申し訳ないが、こちらも表立って動くことになってな。」
「…そうですよね。私もいい加減受け止めなければならないと思っていました。」
「清宮組には引き続き、情報を得るのをご協力願いたい。」
「わかりました。情報が入り次第、連絡いたします。それと…澤田光秀のことも調べ、わかり次第お伝えします。」
翔ちゃんが再び頭を下げる。
私は、こんなにも人を巻き込んでる。
心が痛い。
「わりぃな。あ!それとな、俺と一緒に捜査することになってるやつがいるんだ。おい。」
有馬さんの声で後ろから現れた男。
ガタイがよく、鋭い目をした男だ。
「鴻巣 大樹です。よろしくお願いいたします。」
その人が、頭を下げたあと私に目を向ける。
その目をみた瞬間、私の胸はドクンと嫌な音をたてた。
何…この人…。
あの時の殺気と似た感覚になる。
「これから、有馬さんと一緒に捜査させてもらいます。何かあれば必ず仰ってください。」
鴻巣と言う人は、張り付けたような笑みを私にみせる。
私は、この変な感覚を隠すのに必死だった。
この人は一体…。
変な汗が出てきた。
別にこの人が何かしたって訳ではないのに。
頭で警笛が鳴り響く。
この人は、"危ない"ー…と。
「それじゃぁ、仕事に戻らんと。鴻巣、行くぞ。」
そう言って、有馬さんと鴻巣さんはこの場をあとにした。
まさかこの時、鴻巣さんが私に向けて殺意のある目を向けていたなんて、全く気がつかなかった。
「莉依、帰るぞ。」
その声かけに、みんなが動き出す。
いつの間にか、頭のなかで鳴っていた警笛は止んでいた。
何だったんだろう。
気のせい…とは言えないけれど。
明日から護衛付きだけれど、気を付けて過ごさないと。
これ以上、みんなを巻き込んではいけない。

